第108章 【セイナルヨルニ】
「メリークリスマス、乾杯!」
たくさんのクリスマスキャンドルの明かりが揺れる部屋、周くんと隣り合わせに座り、コツンとグラスを鳴らす。
コクリと一口、口に含む。
シャンパンを真似たノンアルコールのジュースだけど、この幻想的な空間の中オシャレなグラスでいただくと、どことなく大人の味がするから不思議・・・
テーブルの上には周くんのお姉さんが作ってくれたというラズベリーパイ、それから美味しそうな軽食の数々・・・
私が家から持ってきたのも合わせて、本当にちょっとしたクリスマスパーティーみたいで・・・
「・・・美味しい・・・」
お姉さんのラズベリーパイは、サクサクしたパイ生地の中に甘酸っぱいラズベリージャムがたっぷり入っていて・・・
姉さんが璃音のために作ってくれたんだよ、なんて周くんが言うから、そんなお姉さんの心遣いが嬉しくて、胸がいっぱいになった。
「紅茶でも持ってこようか?、いいよ、僕がやるから。」
テーブルに並べられたお料理の数々を食べ終わると、周くんが紅茶を持ってきてくれると部屋を出ていく。
私がしようと思ったけれど、周くんのお家は初めてで勝手も分からないから素直に甘えさせてもらう。
一人になると、改めてゆっくりと部屋の様子を眺める。
窓辺に飾られた大きなクリスマスツリー、部屋中に散りばめられたオーナメント、幻想的にあたりを照らすキャンドルの灯りに美味しいお料理・・・
周くんの用意してくれたクリスマスは、何から何までとても素晴らしくて・・・
素晴らしすぎて、溜息をつきながらバッグの中の小さな包みに視線を落とす。
どうしよう・・・、こんな素敵なクリスマスを用意してくれたのに、私、こんなの出せないよ・・・
それは、私が周くんに用意したクリスマスプレゼント。
何を血迷ったのか、手作りしたリストバンド・・・らしきもの。
お母さんに教えて貰いながら、一生懸命、タオル生地と縫い針と格闘した。