第108章 【セイナルヨルニ】
「すみません、お待たせしてしまって・・・」
結局、周くんが迎えに来てくれるまでに準備は終わらなくて、準備をしている間、リビングでお待たせしてしまうことになって・・・
別に構わないよ、そう周くんは優しく微笑んでくれたけど、申し訳ない気持ちでいっぱいで、深々と頭を下げる。
「それじゃ、ネコ丸、行ってくるね?、お母さんが帰ってくるまで大人しくしてるのよ?」
そう言ってネコ丸の頭をくるりと撫でると、周くんが伸ばしてくれた手の平に自分のそれを重ねる。
少し冷たくて暖かい周くんの指先・・・
擽ったくてドキドキして、重なった指先から視線を上げると、周くんがとても優しい瞳で私を見つめてくれている。
ゆっくりとその距離が近づいてきて、重なり合う唇。
周くん・・・大好き・・・
「さすがに雪だけあって、今日は寒いですね・・・」
「ごめんね?、こんな日に外出させてしまって。」
いいえ、家にこもりきりだし、良い気分転換になります、そんな風に話しながら周くんの家に向かう。
同じ青春台の住宅地を進むと、季節柄、綺麗にイルミネーションしている家が沢山あって、それぞれの力作を目を細めて眺める。
ビュッと冷たい風が吹けば周くんが私の身体を引き寄せ守ってくれる。
暖かい・・・身体もだけど、心が本当に暖かい・・・
そっと寄り添い幸せを噛み締めた。
「・・・お、お邪魔します。」
周くんの家に着くと、緊張から挨拶する声が震えてしまう。
そんな私に、安心して?、誰もいないから、そう言って周くんはクスクス笑う。
それは分かっているけれど、それはそれで緊張しちゃう・・・
好きな人の家で二人きりということは、ご家族の方がいらっしゃるのとは別の緊張が付きまとって・・・
今日は周くんと関係を進めるんだ、そう思うとどうしても態度がぎこちなくなってしまって・・・
そんな私に、まずは乾杯しようか、そう言って周くんはまた笑った。