第107章 【ヌクモリヲモトメテ】
鳴海side~
「大石くん、今日は本当にありがとうね・・・また来てあげて?、きっと英二、喜ぶから・・・」
「・・・はい、もちろんです、明日、また様子を見に来ます。」
英二先輩の家から、大石さんが出てくる。
公園の入り口で様子を伺っていた私に気がついて、目が合ったから深々と頭を下げた。
「君が鳴海さん、でいいのかな?」
「はい、突然のお電話にもかかわらずありがとうございました。」
そう言ってもう一度頭を下げた私に、大石さんは少し眉を下げて、それから、教えてくれて助かったよ、なんて言いながら頭をかいた。
『・・・芽衣子ちゃん、あんがと、教えてくれて・・・オレ、小宮山んとこ、行ってくる。』
『私は別に・・・それに・・・』
学校で英二先輩に事実を告げると、先輩はたくさん涙を流して、それから小宮山先輩の元へと走っていった。
その背中を眺めながら、・・・それに、もう間に合わないかもしれませんけど、そうポツリと呟いた。
そう、こうなるんじゃないかって気がしていた。
だって、もう小宮山先輩のことは、不二先輩がしっかり支えているんだから・・・
英二先輩は、小宮山先輩にそれだけ酷いことをしたんだから・・・
あの日、小宮山先輩と一緒に、英二先輩にそっくりの女の人に出会ってから、小宮山先輩の態度が明らかにおかしくなった。
私にはその女の人への不快感しかなかったけど、小宮山先輩は全て理解したような顔をしていた。
だから、私が出る幕なんてないんだって直ぐに察して、小宮山先輩に言われた通り、その時のことは忘れよう、そう本当に思っていた。
小宮山先輩と不二先輩が噂になっても、小宮山先輩が不登校になっても、英二先輩が学校で以前よりも酷い女遊びを仕だしても、私には関係がない、そう自分の心に言い聞かせていた。
だけど、いつまでも黙ってなんかいられなくて・・・
だって私は、こんな結末のために、英二先輩を諦めたわけじゃないんだから・・・