第107章 【ヌクモリヲモトメテ】
「璃音が作ったものは、なんでも美味しいよ、オススメ。」
そう僕が声をかけると、途端にガタガタと大きな音を立てるふたり・・・
不二くん、一度、病院で診てもらった方がいいわよ、そう璃音のお母さんに真剣な顔で心配されて、璃音と顔を見合わせて苦笑いした。
「周くん、今日も来てくださって、ありがとうございました。」
「うん、それじゃ、また明日、部活のあとに来るよ。」
「はい、お待ちしております。」
楽しい夕飯のひと時をすごし、いつものように玄関先で璃音を抱きしめキスをする。
名残惜しく思いながら帰る帰り道・・・、あの公園に差し掛かったところで足を止める。
英二は、まだあの東屋にいるだろう・・・
あの後、璃音のお母さんが帰宅するまで、きっと英二は璃音の家の前にいて、その後、璃音との思い出が詰まっているあの東屋に引き寄せられたに違いなくて・・・
まぁ、僕に関係ないことだけど・・・
そんな風に思いながらも、ポケットから携帯を取り出すと、少し悩んでからLINEを開く。
それから画面をスクロールさせ、思い描いた人物の通話マークをタップする。
「・・・不二じゃないか!」
「・・・大石?」
通話をかけたはずなのに、すぐ後ろから着信音が聞こえて、すぐさま声をかけられる。
驚いて振り返ると、そこには同じように驚いた顔の大石がたっていて、ポケットから携帯を取り出すと、ディスプレイの僕の名前をみてさらに驚いた顔をした。
「いったい、どうしたんだ?、こんな所で・・・」
「それは僕のセリフ。頼みたいことがあって通話したらすぐそこに大石がいるなんてね。」
通話を終了して携帯をしまうと、駆け寄ってきた大石に僕も歩み寄る。
頼みたいことって、英二のことか?、そう大石に言い当てられて、更に驚いて目を見開く。
絶妙のタイミングで大石が現れたことだけでなく、あまり察しの良くない大石が、僕が英二のことで通話をかけたことに気がつくなんて・・・
もしかして、大石は今のこの状態を知っている・・・?