第107章 【ヌクモリヲモトメテ】
「・・・璃音。」
「はい、周くん。」
もう一度、名前を呼びあった後、また唇を重ねる。
少しためらった後、そっと璃音の唇を舌でノックすると、ビクッと彼女の身体が跳ねた。
「・・・ダメ、かな?」
「ダメ、じゃ、ないですけど・・・」
頬を真っ赤にして視線を泳がせる璃音の顔をジッと見つめる。
目が合った途端、ますます頬を赤く染めて眉を下げたけど、構わずゆっくりと唇を重ねてそのまま口内へと侵入した。
「あ、ん・・・」
璃音が思わず吐息混じりの声を漏らした。
このコエを聞いたのは二度目・・・
以前聞いたは、夏休みに行ったプラネタリウムで、英二が出させたもの・・・
でも今は僕が璃音に出させている。
いや、英二に対する対抗心なんかどうでもいい・・・
その吐息混じりのコエと、璃音の口内の味と感触に、すっかり夢中になっていく・・・
まだ戸惑う璃音の腰に腕を回して、逃がさないようより身体を密着させる。
んん、もう一度、コエを漏らした璃音は、それから少し遠慮がちに僕のキスに応えてくれる。
荒くなる吐息、定まらない視点、すっかり力が抜けて僕にもたれ掛かる身体・・・
ああ、本当に、なんて愛しいんだ・・・
僕のキスでそんな顔されたら、このまま止まれなくなってしまうよ___?
ンニァァ!!
突然、聞こえた大きな鳴き声にハッとする。
璃音の服の裾に滑り込ませかけていた手を引っ込めると、我に返った彼女も慌てて僕から離れる。
「・・・続きはまた今度、だね、クリスマスを楽しみにすることにするよ。」
真っ赤な顔で視線を泳がせた璃音は、はい、そう頷いて笑顔を向けてくれる。
紅茶、今すぐ用意しますね、なんて言ってあちらを向いてしまった璃音の背中を、名残惜しく思いながら眺める。
「・・・お前は英二の味方?」
ソファで丸くなるネコ丸の頭をグリっと撫でると、ネコ丸は耳だけ僕の方に傾けて、あとはこちらに視線を向けることのないまま、静かに寝息を立て始めた。