第106章 【フユゾラ】
「不二くん、やっぱり、私、自分で向き合います。」
「でも・・・」
「大丈夫です、落ち着きましたから・・・」
小宮山が不二に微笑みかける・・・
オレを安心させてくれたあの笑顔が、不二を安心させている・・・
「先程はすみませんでした、少し、気が動転してしまって・・・」
小宮山らしく深々と頭を下げる・・・
強い意志の視線も、ほんといつも通り・・・
だけど、こんなの、いつもとぜんぜん違う・・・
「それから・・・その、実のお母さんのことも・・・黙って勝手に行動してしまって・・・申し訳ありませんでした。」
なんで、小宮山が謝んだよ・・・?
小宮山、なんも悪くないじゃん・・・
「あの日も・・・私、英二くんにきちんと説明することが出来なくて・・・ちゃんと説明していたら、あんなことさせずに済んだのに・・・」
そうじゃないじゃん・・・なんで小宮山が悪いことになるんだよ?
全部、オレがしたことじゃん・・・あんな酷いこと・・・
「学校にも行けなくなってしまって・・・本当にごめんなさい、でも、きっと、大丈夫です・・・冬休み明けにはいけると思います・・・」
不二くんが居てくれるから・・・、そう言って不二の手を握る小宮山・・・
恥ずかしそうにチラリと不二に視線を送ると、不二も優しい眼差しでそれに応える・・・
なんだよ、これ・・・?
なんで、こんな事になってんだよ・・・?
オレが謝りに来たのに・・・
ちゃんと小宮山に謝って、許して貰いたかったのに・・・
それなのに、謝らせてもくんないなんて・・・
「・・・もう、僕の彼女を振り回すのは、やめてもらおうか。」
ふたり寄り添いながらくぐる玄関・・・
ドアが閉まる直前、視線だけ振り返った不二がそうオレに釘を刺す。
厳しい視線・・・
ビクリと震える身体・・・
バタンとドアが完全に閉まる様子を、たた呆然と眺めるしかなかった・・・