第106章 【フユゾラ】
小宮山の鍵には、もうネコ丸にそっくりなマスコットのチビ丸は付いていなくて、オレだってとっくに小五郎のことは捨ててしまったけど、小宮山だけは付け続けてくれてると思いこんでて・・・
ここに来て感じた不安が、どんどんと大きく広がっていく・・・
「小宮山!!、そこにいるんだろ!?、話聞いてよ!!、オレ、謝りたいんだ!!、ちゃんと小宮山に謝りたいんだ!!、だから!!」
認めたくなくて、小宮山に答えて欲しくて、玄関の中に聞こえるよう大声で叫んだ。
だから、なに?、そうオレを制していた不二がまた冷たい声を上げた。
「不二には関係ないだろ!!、オレは小宮山に話があるんだ!!、謝んなきゃなんないんだ!!、小宮山!!、小宮山!!」
関係?、大ありだよ、その不二の言葉にビクッと身体がが震えた。
それから、ゆっくり振り返って不二の顔を見た。
冷たい視線、敵とみなしたものにだけ向ける、容赦ない・・・
「まさか英二が今更現れるなんてね・・・その様子だと、真実を知ったってことかな?、誰に教えてもらったかは大体想像がつくけれど、自分が悪いと分かっているなら、もう潔く引いてもらおうか?」
冷たい不二の視線、声・・・
その圧力に、怯みそうになるけど、キッとオレも睨み返す。
「・・・なんで、不二にんなこと言われないといけないんだよ?」
引けない、はい、そうですか、なんて、簡単に・・・
自分が悪いのはわかってるけど・・・
不安で胸が押しつぶされそうだけど・・・
小宮山のことだけは、絶対・・・
「・・・なんで?、本当はもうわかっているだろ?」
オレの心の中を全て見透かしたように不二が嘲笑う。
いつまでも、小宮山さんが英二を好きだと思ったら、大間違いだよ?、不二の低い声に不安がますます大きくなっていく・・・
ガチャリ、玄関のドアが静かに開いて振り返る。
そこには、小宮山が真っ直ぐにオレと不二を見て立っていて・・・
小宮山さん・・・!、その瞬間、不二の表情がガラリと変わる。
ごめんなさい、お話中に・・・、小宮山が不二に歩み寄る。
オレじゃなく・・・不二のもとに・・・