第106章 【フユゾラ】
「・・・なんで、不二が・・・」
なんで、なんて本当は分かっている。
小宮山を捨てた直後、教室に戻るオレに、もう遠慮しないと言った不二・・・
敵意を隠さない目でオレを睨んで・・・
きっと、あれから小宮山の支えになろうと、ずっと小宮山に会いに来ていたに違いなくて・・・
「・・・!、小宮山!!」
不二の後ろ、目を見開いてオレを見ている小宮山に気がついた。
ゴメン、オレ・・・そう慌てて駆け寄りながら、その身体に腕を伸ばす。
「・・・そこまでだよ。」
その伸ばしたオレの手を不二が遮った。
なんだよ、邪魔すんなよ!、そんな風につい声を荒らげた。
だけど、不二の背中のコートをギュッと小宮山が握りしめているのに気がついて・・・
小宮山・・・?、なんて戸惑いながら問いかけた。
ビクッと肩を跳ねさせる小宮山・・・
だから、そこまでだよ、そう不二がもう一度、低い声を上げる。
「小宮山さん、先に中に入ってて?、僕、ちょっと英二と話をして行くから。」
「・・・あ、は、い、あの・・・」
「大丈夫、すぐに行くよ。」
「・・・はい、待ってます。」
・・・なんだよ、その会話・・・
不二が手にしていたバッグを差し出し、小宮山がそれを受け取る。
それは、小宮山がいつも愛用しているエコバッグ・・・
オレもよく、こうやって小宮山とスーパーから帰ってきた・・・
これじゃ、まるで・・・
「小宮山・・・?」
もう一度、小宮山の名前を呼びかける。
だけど、小宮山は返事をしてくれなくて・・・
それどころか、視線すら合わせようとしてくれなくて・・・
「聞こえないのかよ!?、小宮山ったら!!」
思わず小宮山に掴みかかる。
だけど、やっぱり不二に遮られて、その向こうで小宮山は急いで玄関の鍵を開けて中に入る。
・・・小宮山?、チビ丸、どこにやったんだよ?
夏休み、オレが買って小宮山の鍵につけてあげた・・・
あんなに嬉しそうに、ずっと大切にしてたのに・・・