第106章 【フユゾラ】
オレに中卒で働かせて給料を巻き上げようとしたあの女のことだ、小宮山に目をつけないはずがない・・・
小宮山だって、もしあの女になにか要求されたら、オレを思って言いなりになったに決まっていて・・・
ずっと小宮山の様子がおかしかったのも、目撃されたのがホテルから出たところでよかったという不二との会話も、あの胸に散らばるキスマークも・・・
こんがらがったひとつの誤解が解けると、一瞬で全てが一本の糸になっていく・・・
それなのに・・・
オレ、小宮山に、なんてことしたんだよ・・・
全て、あの女のせいなのに・・・
うっと胃の奥から込み上げてくる嘔吐感・・・
小宮山・・・、自然とその温もりを求めると、苦しいですか?、そう言って芽衣子ちゃんが歩み寄る。
何とか視線だけで見上げると、芽衣子ちゃんはとても冷たい目でオレを見ていて・・・
「でも、もう小宮山先輩は来ないですよ?、先輩が不登校にさせたんでしょ?」
うずくまるオレに芽衣子ちゃんか容赦なく追い討ちをかける。
オレが・・・小宮山を・・・
そうだ、オレが・・・嫌がる小宮山に無理やり・・・
そんで、ひどい言葉と屈辱を浴びせた・・・
「オレ・・・小宮山に・・・だって、知んなかったもん・・・んなこと、全然・・・」
「・・・でしょうね、でも、知らなかった、で、済まされる問題とは思えませんけど。」
本当、芽衣子ちゃんの言う通りで・・・
知らなかったこととはいえ、オレが小宮山にしたことは、簡単に許されることじゃなくて・・・
謝んなきゃ・・・小宮山に・・・今すぐ・・・
なんとか立ち上がると、心配そうにオレを見る女の手を振り払い、フラフラと歩き出す。
それから、ハッとして、慌てて教室に戻ると、掃除用具入れから雑巾を取り出し、さっきオレが汚した小宮山の机を必死に綺麗にする。
「ゴメン、小宮山・・・オレ、ほんと、ゴメン・・・」
次から次と涙がこぼれ落ちる。
小宮山の机の上に、拭いても拭いても・・・
グイッと拳で拭いながら、自分の愚かさを痛感する・・・