第106章 【フユゾラ】
「英二ー、まーたそうやって終わったらさっさと帰るー、少しくらいイチャイチャしようよー?」
「だから、オレはそーゆーのしない主義だって何回言えばわかんだよ?、しつこいともうお前とはやんないよん?」
やることをやって服を整えると、まとわりついてくる女を面倒くさく思いながらあしらう。
ほーんと、信じらんないくらい猫かぶってたんだからー、なんて笑う女に、うるせーよ、そう言ってドアに手をかける。
「・・・ねぇ、英二、この席、このままでいいのー?」
小宮山の席を指さしながら、女がそう問いかける。
チラリと視線だけむけると、まだポタポタと滴り続ける愛液まみれの机・・・
また胸に嫌悪感が広がり、慌てて視線を逸らす。
「・・・気になんならお前が拭けば?、オレ、カンケーねーし。」
「えー、私だって関係ないもーん、じゃー、このままでいいかー!」
もう帰ろー?、そう腕を絡める女に、なんでお前と帰んだよ、なんて言いながら、ガラリと開けたドアの先・・・
「・・・終わりましたか?」
そこには思いがけない人物が待っていた・・・
「あれー?、英二の元カノじゃーん?、英二、待ってたのー?」
「ええ、まぁ・・・」
そこにいたのは確かに芽衣子ちゃんで、もたれかかっていた壁から背中を離すと、お取り込み中のようでしたので、待たせていただきました、そう言ってオレにぺこりと頭を下げる。
思いがけない芽衣子ちゃんの登場に、一瞬、顔を固まらせるも、どったのー?、芽衣子ちゃん、そう以前のように笑顔を作る。
まぁ、それが以前と同じじゃない本性の方の笑顔だってことは、誰が見ても明らかなんだけど・・・
「少し、お話がありまして・・・」
芽衣子ちゃんの視線がオレの腕に絡みついている女へと移動する。
それから、教室内の小宮山の机へと・・・
「・・・あのまま、帰るんですか?」
そのじっと見つめる視線に責められているようで、どうしようもなく胸がイラついて仕方がなかった。