第105章 【ココロノササエ】
「あの、不二くん、今日は本当にありがとうございました。楽しかったです・・・とても・・・」
「良かった、いい気分転換になったみたいだね。」
はい、そうゆっくりと首を縦に振る。
それじゃ、別れ際、いつものようにふわりと重なる唇。
またね、そう笑顔で背を向ける不二くんを慌てて呼び止める。
あ、あの!、その声が思ったより大きくて、恥ずかしくて思わず俯いた。
「・・・どうしたの?、小宮山さん。」
私のその行動に目を見開いた不二くんが、不思議そうに振り返る。
早く、言わなくちゃ・・・不二くんが待ってる・・・
ただでさえ、学校と部活のあとで疲れてるのに、わざわざ家まで来てくれて、気分転換にイルミネーションまで見に連れていってくれたのに・・・
だけど、本当に私の口はこんなときには役立たずで・・・
ちゃんと、不二くんが好きと伝えないといけないのに、全然、声にならなくて・・・
「あ、あの・・・明日も、来てください、ね・・・?」
結局、出てきた言葉は、そんな分かりきってる事の確認で・・・
「・・・うん?、そのつもりだよ?」
「明日だけじゃなく、明後日も、明明後日も・・・」
「・・・小宮山さん?」
不二くんの袖をギュッと握りしめる。
言わなくちゃ・・・ちゃんと、伝えなくちゃ・・・
真っ直ぐに、不二くんの瞳を見つめると、そんな私の様子を不二くんが驚いてみている。
「・・・クリスマスも、あの、一緒に・・・ふたりきりで・・・ずっと、そばに・・・」
さすがに「抱いてください」とは言えない・・・
でも、私が欲しいと言ってくれた不二くん・・・
もちろん、そういう意味じゃないのは分かっている・・・
自分からこんなこと言うなんて、すごく恥ずかしくて、はしたない事だってもわかってる・・・
だけど、今じゃなきゃ、言えないから・・・
そうしてあげたいって、本気で思っているから・・・