第105章 【ココロノササエ】
「・・・小宮山さん、さっき、僕が言ったことを気にしてるんだね、いいんだよ、無理しないで・・・」
「無理なんかしてません、私・・・無理なんか・・・」
はっきり言えない私に、不二くんが気を遣ってくれる。
違うんです、大きく首を振ってそれを否定する。
無理なんかしてない、私、本当に無理してこんなこと言ってるわけじゃ・・・
私は、ずっと私を支えてくれていた不二くんと、ちゃんと付き合いたいと思って・・・
「私、不二くんが・・・あの、好きなん___」
「小宮山さん・・・!」
好きなんです、そう言い終わらないうちに抱きしめられた身体・・・
普段の優しく包み込まれるものとは違う・・・
しっかりと、力強く・・・
「夢みたいだ・・・」
微かに聞こえた不二くんの震える声・・・
夢じゃありません、そう伝えたくてその身体を抱き締め返す。
そう、夢じゃない・・・
不二くんなら大切にしてくれる・・・
不二くんとなら、心穏やかに付き合っていける・・・
「私、不二くんが好きです・・・」
「ありがとう、小宮山さん___」
良かった、ちゃんと言えて・・・
不二くんが喜んでくれて、私もすごく嬉しい・・・
不二くんの腕の中に包まれると、本当に心が満たされた・・・
部屋に戻ると、携帯を取り出してLINEを開く。
画面をスクロールして、英二くんの大五郎をタップする。
そこには英二くんとの、たくさんの通信記録。
まだ幸せだった頃のメッセージをたんたんと眺める。
この頃はすごく幸せだった・・・
辛いことも沢山あったけど、その何倍も満たされていた・・・
英二くんのためなら、何だって出来た・・・
それが自分を犠牲にすることだって、何だって・・・
それでも、もう私には関係ない・・・
過去は、振り返らない・・・
必要なのは、不二くんとの未来だけ・・・
そう心は静かなまま、英二くんをプロック削除した___