第105章 【ココロノササエ】
「小宮山さん、もし本当にサンタクロースがいたら、何をもらいたい?」
並木道のイルミネーションを抜けた先・・・
クリスマスツリーに姿を変えたシンボルツリーの前で不二くんが問いかける。
サンタクロースに・・・そんな高校生には少し幼い発想も、この夢のような空間の中では、素直に言葉に出来るから不思議・・・
「・・・そうですね・・・強い心が欲しいです・・・簡単に折れてしまわない、強い心が・・・」
中学の時も、一生懸命がんばって、がんばって、がんばって・・・
最後にとうとう頑張れなくなってしまった。
ナオちゃんと香月くんから逃げて、引越しまでして違う学校を選んで、それで入った青学へも結局行けなくなってしまって・・・
周りに心配ばかりかけてしまう、もろい自分の心が嫌になる・・・
そんな私の願いに、不二くんは少し困った顔をするから、すみません、こんな話・・・、そう申し訳なく思って眉を下げる。
「不二くんは何をお願いしたいですか?、サンタさんに・・・」
慌てて空気を変えようと不二くんに話を振ると、___そうだな、そう不二くんが伏し目がちな視線をゆっくりと私へと向けるから、ドキリと心臓が跳ねた。
「___小宮山さん、が欲しい。」
真っ直ぐに向けられた視線・・・
熱くなる頬・・・
あ、あの・・・、なんとか声を振り絞る・・・
「ふふ、驚いた?」
なんて返事をしたらいいか戸惑う私に、不二くんの真剣な顔がいたもの笑顔に変わる。
さ、帰ろうか、そう言って優しく手を引いてくれる。
あ、はい・・・、不二くんに腕を引かれながら、ちゃんと不二くんを受け入れようと強く思う。
こんな中途半端な関係じゃなくて、ちゃんと彼氏と彼女の関係に・・・
この繋がれた腕の温もりを失いたくないから・・・
きっとこの気持ちも、好きと同じだから・・・
小走りで不二くんの横に並ぶと、彼が優しく笑いかけてくれる。
その笑顔がいつもより輝いて見えた帰り道___