第105章 【ココロノササエ】
「キレイ・・・」
頭上から降り注ぐ光のシャワー・・・
思わず息を止めてため息を落とす。
木枯らしに吹かれ、眠りにつこうとしていた木々たちが、何十万個もの小さな光を身にまとい、こんなにも素晴らしい感動を与えてくれるなんて・・・
「ね、来てよかったでしょ?」
「はい・・・本当に・・・」
青春台に引っ越してきて初めて迎えた一年前の冬・・・
その素晴らしさにしばらく息を吸うのも忘れて立ち尽くした。
それから12月のあいだは、学校帰りにこのイルミネーションを眺めるのを楽しみにしていて・・・
今年も見れてよかった・・・
ううん、イルミネーションが見れたことだけじゃない・・・
久しぶりにお気に入りの服に着替えて少しだけメイクもして、外の空気を吸えて・・・
怖かった周りの目も、不二くんの言う通りこんな時間じゃ学生はほとんど目につかなくて・・・
もちろん、塾やバイト帰りの人たちもいることはいるんだけど、みんなの視線は綺麗なイルミネーション集中していて・・・
「連れてきてくださって、ありがとうございました・・・」
「・・・それは僕のセリフ。」
心からの感謝の言葉・・・
そんな私に不二くんはそう答えるから、不思議に思って彼に視線を向ける。
えっと・・・?、そう意味がわからず戸惑う私に、不二くんはいつもの優しい眼差しで笑いかけた。
「僕が小宮山さんと一緒にこのイルミネーションを見たくて誘ったんだから・・・ありがとう。」
不二くんのその言葉に、恥ずかしくて慌てて視線を逸らす。
不二くんと一緒にいると、とても穏やかな気持ちになれる・・・
英二くんのときのような、激しい胸の高鳴りや、胸が締め付けられるような苦しさはないけれど、優しくてすごく安心できる・・・
自宅を出てからずっと、当たり前のように繋いでいる手を、ギュッと握りしめる。
すると、不二くんは少し驚いた顔をして、それから元の穏やかな微笑みをまた私に向けてくれた。