第105章 【ココロノササエ】
「せっかくだから、今から見に行かない?、お母さんにはさっきお許しをいただいたんだけど・・・」
思いがけない不二くんの言葉に、驚いてその顔をじっと見つめる。
まさか不二くんに誘われると思わなくて・・・
「僕とじゃ、嫌かな・・・?」
「いいえ!、そんな、嫌というわけじゃ・・・」
不二くんが眉を下げて少し寂しそうな顔をするから、慌てて大きく首を振った。
別に不二くんと一緒に行くのが嫌ってわけじゃない・・・
ただ、英二くんと約束していた場所だから・・・
すごく楽しみにしていた分、代わりに不二くんと行くみたいで悪いな、なんて思ってしまうし、実際に行ってみたら複雑な気持ちになってしまうかもしれないのが怖くて・・・
それに・・・
「知ってる人に、会うかも知れませんし・・・」
青春台駅前のイルミネーション・・・
この時期は恋人たちはもちろん、友達連れや家族連れ、老若男女問わず色々な人が訪れる場所・・・
そんな場所に赴けば、自然と知り合いに会う可能性は高くなるわけで・・・
正直、今はそれがすごく怖い・・・
「平気だよ、明日も学校があるから、こんな時間に出歩いている生徒なんてもう殆どいないし、それに・・・」
僕がすべて受け止めるし、必ず支えるから、そう言って私の不安をすべて理解し包み込んでくれる不二くん・・・
それでは・・・行こうかな、そう不思議と前向きな気持ちになれるし、自然と頬が緩んでしまう。
「あの、それではリビングで待っていてもらえますか?、急いで準備しますので・・・」
「うん・・・でも、その前に・・・」
ゆっくりと近づいてくる唇・・・
もう何度目かも分からないキス・・・
毎日、来てくれるたびに受け入れてる・・・
私はまだ、不二くんからの告白に、ちゃんとした返事を出来ずにいるのに・・・
不二くんの肩に寄り添いながら、罪悪感に胸を痛めるも、彼の優しさにまた甘えさせてもらった。