第105章 【ココロノササエ】
美沙・・・
不二くんが毎日来てくれるように、美沙は毎日授業のノートをとってくれていた。
勉強が決して得意ではない美沙がここまでしてくれているのに、私は未だにLINEに既読すらつけられていなくて・・・
それどころか、家にも何度も来てくれているのに、いつも居留守を使ったり、お母さんに断ってもらったりまでしていて・・・
ゴメンね・・・心配してくれてるのに・・・
ギュッとノートを抱きしめると、もう何度目かわからない謝罪を心の中で繰り返した。
「小宮山さんの家もクリスマスツリー、飾ったんだね。」
「え?、あ、はい・・・昨日の夜、お母さんと・・・」
不二くんの言葉にハッとして顔を上げる。
世の中、すっかりクリスマス一色で、昨夜、夕食の片付けを終えた後、我が家も!とお母さんが言い出した。
正直、クリスマスなんて気分ではないけれど、部屋にこもりがちな私のために、気分転換させようとしてくれたお母さんの気持ちがありがたかったから、一緒にリビングで飾り付けをした。
「街中、クリスマス一色でとても綺麗だよ、駅前のシンボルツリーも並木道も・・・」
「・・・きっと、そうでしょうね・・・」
世界中がイルミネーションで光り輝くこの時期は、毎年、気持ちがワクワクして・・・
その光の中を、用もなく歩くのが大好きで・・・
本当だったら、英二くんと一緒に見に行く約束をしてたんだけどな・・・
『小宮山、12月になったらさ、駅前の並木道のイルミネーション、一緒に見に行こうにゃ?』
『あ、は、はい!、あの・・・私でいいん・・・』
『だから、小宮山がいいの!、シンボルツリーもさ、クリスマスツリーに変身すんじゃん?、きっと一緒に見たらもっとキレイだぞ?』
英二くんと遊園地でデートしたとき、観覧車の中で景色を眺めながら約束した時のことを思い出す。
あの頃は本当に幸せで・・・
ずっとふたり、一緒にいられるって信じていて・・・
ほんの少し前のことなのに、もうすごく昔のことのようで・・・