第105章 【ココロノササエ】
もう、英二くんにだけじゃなく美沙にも合わせる顔がない・・・
ううん、クラスのみんなだって・・・
みんな、あんなに良くしてくれたのに・・・
私に嫌がらせしていた人たちでさえも、いじめから守ってくれたのに・・・
大好きだったのに・・・
みんな、本当に大好きだったのに・・・
ブーブーと鳴り続けるバイブがいたたまれなくて、ベッドに飛び込むと頭から布団をかぶる。
お願い、それ以上鳴らさないで・・・?
ベッドの中で必至に耳を塞ぎ続けた。
「璃音、不二くん、来てくれたわよ。」
「やぁ、小宮山さん、気分はどう?」
部屋のドアをノックして、お母さんが不二くんを案内してきてくれる。
そんな不二くんを笑顔で部屋に迎え入れる。
あれから二週間・・・
結局、あの後、風邪を引いてしまって、学校を休むことになった。
熱が下がってからも、色々なことを考えると、もう学校に行く勇気が持てなくて・・・
ただでさえダメージが大きかった私の心は、数日続いた高熱で更に弱く脆くなってしまって・・・
そんな私に不二くんは毎日必ず、部活帰りに会いに来てくれた。
毎日の不二くんの笑顔は、弱りきった私の心をしっかりと支えてくれた。
「不二くん、毎日ありがとうね・・・璃音のこと、よろしくね。」
「はい、全力で小宮山さんを支えます。」
中学に引き続き、また学校に行けなくなってしまって、お母さんにこうして心配ばかりかけて・・・
私って、どうしてこうなんだろう・・・、そう申し訳なく思うんだけど、自分ではどうしようもなくて・・・
それから、そう言ってくれる不二くんの力強い声が心地よくて・・・
「はい、小宮山さん、今日も預かってきたよ、市川さんから。」
お母さんがリビングへ戻ると、不二くんがラケットバッグからノートを取り出す。
ありがとうございます、そうお礼を言い、少し迷いながらそれを受け取る。