第105章 【ココロノササエ】

不二くんのおかげでだいぶ気持ちが軽くなったとはいえ、やっぱり英二くんから受けた傷はそう簡単に消えてなくなることはなくて・・・


『もういんねーよ、クソビッチ・・・！』


最後に見た英二くんの冷たい目を思い出すと、ギューッと心臓が震えて、その場に身体を抱えてうずくまった。







ブーブーと鳴るカバンの中の携帯のバイブにハッとして顔を上げる。
通話・・・？、なり続けるバイブに恐る恐るディスプレイを確認する。


誰だろ・・・不二くん・・・？
英二くん・・・のはずはないよね・・・
もう私なんか必要ないんだもん・・・


複雑な思いで見た画面には、美沙の名前があって・・・
そっか、美沙・・・そうホッとする。


通話マークをタップしようとして、それからドクンと大きくざわめく心臓・・・
ダメ・・・美沙になんて言ったらいいか分からない・・・


詳しいことなんて言えっこない・・・
英二くんが不二くんと私の噂を信じた今、きっともう噂は本当だったって学校中が思っているはず・・・
美沙は噂に惑わされる子じゃないけれど、だからこそ、ちゃんと私が本当のことを言わないといけないのに・・・


それに・・・私、不二くんを受け入れてしまった・・・
英二くんとのことを忘れるために、不二くんの優しさに甘える私を、美沙が軽蔑しないはずがない・・・


『・・・不二くん、さすがにキツイでしょ、彼女と親友に裏切られるってさ。』


蘇る以前の記憶・・・
まだ美沙に英二くんと付き合っていることを内緒にしていて、不二くんと付き合っていることになっていた頃・・・
体育館倉庫で英二くんとあっている所をクラスの男子に見つかって、英二くんが必死にかばってくれた時・・・


その日の放課後、私に向かって美沙は冷たく言い放った・・・
私、そう言うの、許せない・・・とも・・・


そんな美沙がこんなあっさり不二くんを受け入れた私を、許してくれるとは思えない・・・