第105章 【ココロノササエ】
応えたいと思った・・・
私をずっと好きだったという不二くんの想いに・・・
甘えたいと思った・・・
忘れるために利用していいよというその言葉に・・・
不二くんにキスされると気がついたとき、ダメ、そう思ったけど身体が動かなくて・・・
不二くんに見つめられると、どうしても金縛りにあってしまったようで・・・
でも、触れ合った唇の暖かさは、決して嫌なものじゃなくて・・・
ううん、その暖かさが粉々になった心の隙間に染み込んでいくようで・・・
気がついたら不二くんのキスを受け入れ、その制服の裾を握りしめていた。
不二くんの腕に包まれながら帰った帰り道・・・
自分の気持ちに素直になった。
素直になったら、もう不二くんのキスを拒む理由がなくなった。
不二くんがいてくれて本当によかった。
ありがとう、そう不二くんの背中に深々と頭を下げた。
鍵を開けて玄関に入ると、チリンチリンと鈴を鳴らしてネコ丸が駆け寄ってくる。
ただいま、ネコ丸、そういつものように抱き上げ部屋へと向かう。
「ダメ、不二くんのジャージに爪痕ついちゃったら大変でしょ?」
コートをクローゼットにかけながら、足元に絡みつくネコ丸を軽くあしらい、不二くんが貸してくれたジャージから部屋着へと着替え、洗濯を済ましてくれた制服をシワにならないようハンガーにかけた。
その瞬間、何かがコロリとポケットから転がり落ちる。
すぐさまネコ丸が反応しじゃれつくそれは、青春学園の校章が描かれている学ランのボタン・・・
これって・・・英二くんの・・・
私、無意識のうちに持ってきちゃったんだ・・・
ネコ丸から取り上げ拾い上げると、色々なことが一気に胸に蘇って・・・
辛かったことも、幸せだったことも、苦しかったことも、すべてがフラッシュバックしてきて・・・
気がつくと、頬をたくさんの涙がこぼれ落ちていて・・・