第105章 【ココロノササエ】
「美沙には連絡あるんでしょ?、璃音、なんて・・・?」
「うーん・・・まぁ・・・」
友人の問いかけに、歯切れの悪い返事をする。
というか、そう言うしかできなくて・・・
あの日、璃音が帰ったあとすぐに、大丈夫?、そうLINEを送った。
だけどいつまでも既読はつかなくて、雪の中、璃音の家まで行ってみた。
でも、何度インターフォンを鳴らしても璃音は出てくれなくて、やっぱり避けられてるのかな?って柄にもなく落ち込んだ。
それから、ブンブンと大きく頭を振って悪い考えを追い払った。
璃音は面倒くさい性格だから、きっとこんなことになってしまって、もう私に合わす顔がない、なんてくだんないことを考えてるに違いなくて・・・
だから、その顔を見て、バカ!って、もっと親友を信じなさい!って言ってやらないと気がすまなくて・・・
別に璃音が誰を選んだって構わないのに・・・
何度行っても会ってくれない、電話にも出てくれない・・・
「早く学校に来なさいよ、バカ璃音・・・」
「不二くん、はい、これ、今日の分。」
「ありがとう、市川さん、毎日ゴメンね。」
放課後になると毎日不二くんのクラスへと向かう。
璃音の休んでいる間、毎日取り続けている授業のノート。
学年首席の璃音に、後ろから数えた方がずっと早い私のノートなんて意味ないかもしれないけれど、それでも私の気持ちは分かってもらいたくて・・・
「別に、璃音のためにやってることで、不二くんにお礼を言ってもらう必要も、謝ってもらう理由もないから。」
「それもそうだね、ゴメンね。」
私の愛想のない仏頂面にも、不二くんは人の良い笑顔をむけるから、そんな彼の対応に罪悪感で自分が嫌になる。
ごめん、不二くん・・・完全な八つ当たり・・・
だってあんたは璃音に毎日会ってもらえるんでしょ?
私はLINEすら読んでもらえないのに・・・