第104章 【ホウカイ】
「・・・や、やだー!、英二、いくら私が魅力的だからってー!」
冗談だと思ったのか、その女は一瞬戸惑った後、いつものようにオレの背中をバシバシ叩きながら、そう笑い飛ばす。
周りのみんなも、だよな、冗談だよね、なんて口々に言いながら、苦笑いを浮かべている。
ま、学校のヤツらはそう思うよな・・・
普段のオレしかしらないんだから・・・
そのまま、冗談で済ましても良かったんだ。
学校ではひたすら本性を隠し続けてきたわけだし・・・
「別に?、女なら誰でも同じだって・・・」
そのオレの切り返しに、決して冗談じゃない、そうその女もクラスのヤツらも気がついたようで・・・
一瞬、和んだ空気がまた凍りつく。
「出来ないなら別にいいけど・・・他あたるから。オレが声かければ、簡単に股開く女なんていくらだっているし。」
「えぇ?、いや、英二、いくらヤケになったからって、そんな・・・」
「いんや、オレ、もともとこんなだし・・・」
確かにヤケになって、本性暴露してんだけど・・・
それと当てつけ・・・
夏休み前に小宮山にイラついて、芽衣子ちゃんを巻き込んだ時と同じ・・・
本当、自分でも最悪だと思うけど、こうでもしなきゃ、小宮山と不二に裏切られたこの辛さを、どう乗り切ったらいいかわかんなくて・・・
「で?、身体で慰めてくれんの?、くんないの?」
立ち上がり、そうジッとその女の顔を横目で見る。
あ、言っとくけど、付き合うとかそんなのはないから、そう言って釘を刺すと、カバンを引っ掛け歩き出す。
「あ、まっ、待って!、いいから!、それで・・・だから!」
顔を真っ赤にして付いてきたその女に、やっぱバカ・・・そう思いながら肩に腕を回す。
ビクッと肩を震わせるから、おまえ処女?だったら面倒だから嫌なんだけど、そう吐き捨てるように呟くと、ちがっ、違うの!、そう慌てて首を横に振る。
「ふーん・・・んじゃ、いくよん?」
みんなが注目する中、無表情でその女の肩を抱きながら歩き出した。