第103章 【ボクガシアワセニ】
「___え?」
腕の中の小宮山さんが、ピクっと肩を震わせる。
信じられない、そう言った様子で、目を見開いて僕の顔を見る。
今、伝えるのは、ズルイかもしれない。
小宮山さんの弱っている心に付け入るようで・・・
だけど、弱っている今だからこそ、尚更、僕の気持ちを知ってもらいたい。
キミをこんなにも想っている男が、すぐそばにいるってことを・・・
「やっぱり、気がついてなかった?、僕ね、ずっと小宮山さんが好きだったんだ。」
「だって・・・そんな、でも・・・」
小宮山さんを抱きしめていた手を肩に置くと、彼女の顔をじっと見ていう。
そんな彼女は目を泳がせて、僕の視線にひたすら戸惑っている。
良かった・・・小宮山さんが反応してくれて・・・
さっきまでの抜け殻のような彼女より、ずっといい・・・
それに、小宮山さんが僕の視線に頬を染めてくれた・・・
今まで、何度、僕が彼女への想いををほのめかしても、自分へ向けられた言葉なんて考えもしなかった小宮山さんが、初めて僕を意識してくれている・・・
ただそれだけなのに、こんなにも嬉しいなんて・・・
「小宮山さんと英二を応援していたのは本当だよ?、でも、キミが好きなことも事実なんだ。」
「あ、あの・・・いつ、から・・・?」
いつ・・・?、いつだろ・・・
気がついた時には、もう小宮山さんに特別な感情を抱いていた。
英二をひたむきに愛するその儚さと強さに惹かれ、じっとその姿を目で追って、周りが簡単に気がつくくらい、この想いを隠しきれなくなっていた。
「もしかしたら、最初からかもしれない・・・あの放課後の教室で、キミにキスされたあの時から・・・」
そんなに前から・・・?、そう小宮山さんは信じられない様子で呟くと、震える手を胸の前で握りしめて、大きく眉を下げる。
それから、数秒、伏せていた目を開き、しっかりと僕の目を見返す。
その瞳に宿る強い意志と覚悟、僕が好きになった・・・
「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったもの・・・
これから小宮山さんがいう言葉が手に取るように伝わってくる・・・