第103章 【ボクガシアワセニ】
対応してくれた教科担任の先生に断りを入れて、小宮山さんの席に向かう。
璃音、大丈夫?、そうこっそり市川さんが問いかける。
「大丈夫、僕がついているから。」
小宮山さんの荷物をまとめてくれた彼女にそう答えると、璃音が幸せになるなら、私は誰でもいいけど、そう市川さんはボソッと呟く。
幸せにするよ、必ず・・・
小宮山さんを・・・
英二じゃなく、僕が、この手で・・・
「あ・・・」
小宮山さんの荷物を持って部室に戻ると、小宮山さんは既にシャワーを浴び終えていて、ベンチに腰掛けぼんやりと空(くう)を見つめていた。
僕のレギュラージャージは、スポーツマンの男としては小さいほうだけど、それでも女の小宮山さんが着ればブカブカで、その様子に思わず頬が緩む。
だけど、僕に気がついてゆっくりとこちらに視線を向けた小宮山さんの、その光のないままの瞳にその頬を引き締めた。
「帰ろう、送っていくよ。」
「・・・でも、それじゃ、不二くんまで・・・授業が・・・」
構わないよ、そう言って小宮山さんの元に歩み寄ると、彼女に向かって手を差し出す。
少し戸惑った小宮山さんが、それでは、お願いします、そう言って僕の手に綺麗な指を重ねてくれた。
さっきよりはだいぶ温かさを戻した指先・・・
やっと触れることが出来た・・・
離れないようにギュッと握りしめると、それからグイッと引き寄せる・・・
「あ、あの・・・不二くん、私、もう大丈夫ですから・・・」
「違うよ・・・」
小宮山さんは僕が彼女を落ち着かせようと抱きしめているとしか思ってなくて・・・
きっと今までの、僕の精一杯のアプローチも、彼女を慰めるためだけのものとしか思ってなくて・・・
「違う、違うんだ、小宮山さん・・・僕は小宮山さんが・・・」
彼女の耳元でゆっくりと囁く・・・
「好き、なんだ___」