第103章 【ボクガシアワセニ】
「部室、近いから・・・」
「・・・あ、はい、すみません・・・」
戸惑う小宮山さんに手を差し出すと、恐る恐る手を伸ばした彼女がハッとして、慌てて地面に置き去りにされた下着を手の中に隠す。
気まずく思いながら視線を逸らした先に転がる、破きかけのコンドーム・・・
怒りのまま踏みつけると、さらにつよく地面へとにじりつけた。
「はい、これ、僕のタオルとジャージ、綺麗だから・・・」
部室にたどり着くと、すぐに暖房を強にして部屋を暖める。
それからロッカーからタオルとレギュラージャージを出して、それを手渡す。
「あ、でも・・・」
「その制服、小宮山さんがシャワーを浴びているうちに洗っちゃうから・・・」
「いいえ、そんな・・・」
「そんなもの、すぐに洗って綺麗にしてしまった方がいいよ。」
そう、早く洗ってしまった方がいい・・・
汚れも涙も、きれいさっぱり洗い流してしまったほうが・・・
僕のその申し出に小宮山さんは少し戸惑って、それから僕の差し出したタオルとジャージを受け取ると、ありがとうございます、そう言って頭を下げた。
小宮山さんがシャワールームに入ると、洗濯機に小宮山さんの制服類と、彼女に羽織らせたことで汚れてしまった僕の学ランも一緒に入れる。
スイッチを入れると、今のうちに・・・と彼女の教室に向かう。
コンコン
「失礼します、小宮山さんは体調不良で早退しますので、代わりに荷物を取りに来ました。」
ざわめく教室内・・・
小宮山さんのクラスということは、当然英二のクラスなわけで・・・
だけど、英二が座っているはずの席には、何故か市川さんが座っていて、僕と目が合うと彼女は窓の方へと顎を向ける。
ああ、そういうことか・・・
英二は元の市川さんの席に座り、僕と小宮山さんのことなど眼中に無いと言った様子で、頬杖をついて外を眺めていた。