第102章 【サクジョ】
小宮山の手を引いて歩いた廊下を、一人きりで戻ってくる。
みんなが遠巻きにオレを眺めている。
誰も話しかけてこないのは、きっと、オレが話しかけにくい雰囲気を醸し出しているから・・・
「・・・英二!」
後から聞こえた不二の声・・・
ピクリと肩が震えて立ち止まる。
「今、教室から英二が見えて・・・どうしたの?、昼は小宮山さんと一緒だったはずじゃ・・・?」
だけど、もう不二とだって話をしたくなくて、そのまま歩みを再開する。
「英二ってば!」
グイッと肩を引かれ反動で振り返る。
オレのその顔に不二が目を見開く。
「・・・触んなよ・・・」
冷たくその手を振り払うと、一瞬、戸惑った顔をした不二だったけど、直ぐにすげー怖い顔をして、小宮山さんは?、そう低い声で問いかけた。
「・・・知らねーよ・・・」
「・・・小宮山さんに何したの?」
「・・・別に?、オレがあの女に何しようがオレの勝手じゃん?」
「英二!!」
オレの言葉に不二が声を荒らげる。
ざわめく生徒達・・・
なに?、喧嘩?、みんなが集まってくる・・・
そりゃ、そうだよな、話題のふたりが険悪な雰囲気なんだ。
オレだって当事者じゃなきゃ、野次馬の先頭で楽しむに決まってる。
「英二、まさか小宮山さんより噂を信じたってこと?」
「小宮山の何を信じろっていうんだよ!!、あんなもん見せられて!!」
「小宮山さんの口から、ちゃんとその理由を確かめたの!?」
「そんなの、聞かなくたって分かんじゃん!!」
不二が一番分かってんだろ!、そう声を張り上げたオレに、・・・もういい、そう不二が低い声で答える。
鋭い目付きは、まるでルドルフの観月や立海の切原に怒りをあらわにした時そのもの・・・
なんだよ、なんで不二が怒んだよ・・・!
悪いのは不二じゃん・・・!
信じてたんだ・・・
小宮山も、不二も、オレの大切な、本当に大切な人たちだって・・・
いつも、心から感謝してたんだ・・・
それを、こんな形で裏切られるなんて・・・