第102章 【サクジョ】
嘘だ、嘘だ、嘘だ!
小宮山と不二が浮気だなんて、そんなの、絶対、嘘に決まってる!!
必死に自分に言い聞かせながら向かった生徒指導室……
ドアの前でふたりが深刻そうな顔で話している……
思わず廊下の角に身を隠す。
……なんで、オレ、隠れてんだよ……
いつもみたいに、笑って跳びつけばいいじゃん……?
そんで、人前ではって小宮山に怒られてさ……
「……それより……目撃されたのが出るところで良かった……」
「はい……」
途切れ途切れに聞こえた言葉……
心臓が止まるかと思った。
それって、やっぱ、ふたりでラブホに行ったってことなんじゃ……
「小宮山!、不二!、いったい何があったっていうんだよ!?、学校中で変な噂になってるよー?」
認めたくなくて、大声をあげながら駆け寄った。
何でもないふりをして笑顔を作った。
「あ、あの……英二くん、私……」
「あー、だいじょうび!、噂は聞いたけど、そんなのぜんぜん気にしてないもんね!、ふたりがオレのこと、裏切るはずないじゃん?」
それは小宮山に向けて言った言葉……
でも本当は、不安で不安で仕方が無い自分自身に言い聞かせたもの……
小宮山……?
なんで気が付かないんだよ……?
いつだって、オレの嘘の笑顔なんて、すぐに見破ってくれるのに……
だけどその時、小宮山は全然気付いてくんなくて……
それどころか目も合わせてくんなくて……
作った笑顔のまま、心にもないことを口にし続けるしかなくて……
なんで、気が付かないんだよ……?
何度も笑顔の奥で繰り返す疑問。
そしてそれはすぐに苛立ちに変わって行く。
なんで、気が付かないんだよ!!
落ち着け、そう大きく深呼吸して気持ちを落ち着ける。
小宮山だって動揺してんだから仕方が無いじゃん……?
こんな噂たてられて、生徒指導室なんかに呼ばれてさ……
大丈夫、大丈夫、そう必死に自分に言い聞かせながら、ギュッと胸のボタンを握りしめた。