第101章 【ハツユキガフッタヒ】
「……はは、やっぱ、不二とイイコトしたんじゃん?」
私の制服の胸元をグイッと下げた英二くんの口から、乾いた笑い声が溢れる。
違うんです!、そう慌てて胸元を隠しながら否定する。
違う、これは不二くんに付けられたものじゃない!
それに、あの男の人とだって、最後までしたわけじゃ……
でも、やっぱりそんなこと、英二くんに言えるわけなくて……
だって、ちゃんと理由を説明しようと思ったら、英二くんの本当のお母さんのことも、隠さずに話さないといけなくて……
「ちゃんと言えばいいじゃん?不二とヤりましたってさ?」
「違います、本当にこれは……」
「楽しかったかよ?、よりによってオレの誕生日に不二と浮気なんてさ?」
「違う!、違うんです……」
ただ、違うんです、そう繰り返すしか出来なくて……
「何が違うっていうんだよ!!」
パン!、大きな音とともに頬に走った衝撃……
驚いて英二くんの顔を眺める……
自分でも信じられない様子で、英二くんが私へ振り下ろした平手を眺める。
そしてそのまま、頬を抑える私へと移された視線……
目が合うと、一瞬だけ、彼のその視線が泳いだ。
それでも、英二くんの目から怒りの色は消えなくて……
それどころか、桁が外れたように濃く強くなっていく……
「なんだよ!小宮山が悪いんだろ!あんなに裏切んなって言ったのに!」
グイッとひとつにまとめられた手首……
あっという間に外されたリボンで固定される。
やめて……こんなの、まるであの時みたい……
思い出すのは、初めて英二くんに襲われた、あの体育館倉庫……
でも、あの時とは全然違う……
あの時から私たちは色々あって、辛いことも苦しいこともふたりで乗り越えてきて、愛と信頼を育んできたのに……
だけど……それを裏切ったのは、他でもない私……
私は、英二くんを傷つけた……