第101章 【ハツユキガフッタヒ】
「……なに?、嫌なの?」
その英二くんの声にビクッと肩が跳ねた……
だって、口調は穏やかだけど、その声はとても低い……
それは、英二くんが怒った時に出すもの……
もうすっかり聞くことは無くなったけれど、セフレだった時はよくこの声で怒られてた……
「あ……あの、英二くん……?」
信じられない思いで見上げた英二くんの顔は、まさにあの頃の怖く険しいそれで、どうして……?、そうバクバクする心臓をぎゅっと抑える。
「英二くん、ごめん、なさい、私、嫌って、わけじゃ……」
「なんで謝んだよ?、小宮山、オレに謝んなきゃなんないことしたわけ?」
「いえ、そう言うわけじゃ……」
寒さと恐怖で声が震える。
それから、ひどい混乱……
英二くん、どうして急に……?
急に……?
ううん、急じゃないのかもしれない……
教室では普通だった……と思う。
普通に話をしていたし、笑顔だっていつも通りだったと……
でも、もしかしたら、私がいっぱいいっぱいだったから、英二くんの些細な笑顔の変化に、気が付けなかったのかもしれない……
英二くん、本当は、いつから怒っていたの……?
「嫌じゃないならいいじゃん?」
また無理やり重ねられた唇。
そのまま、英二くんがセーラーのリボンに手をかける……
その行動にハッとして、ダメ!、慌ててそれを拒む。
リボンを外されたら見られちゃう!
昨夜、あの男の人に付けられた、くっきりと残る赤い痕……
それだけは絶対ダメ、必死にリボンを握りしめる。
「……だから、何でだよ?」
さらに低くなった声……
なんでって、そんなこと言えるはずがない……
ごめんなさい、そうただ震える声で謝るしかなくて……
「だから、悪いことしてないなら、謝んなって言ってんだろ!!」
英二くんの声が荒がる。
ビクッと震える身体……
力ずくで解かれた胸のリボン……
その瞬間、英二くんの動きが止まった____