第101章 【ハツユキガフッタヒ】
「英二、ずいぶん大人になったね?」
「あったりまえじゃん!、もうそんな子どもじゃないっての!、それにしても、PTA会長のやつ、寝ぼけて夢でもみたんじゃないのー?」
私のことを信じてくれる英二くんに、罪悪感で胸が痛くなる。
ごめんなさい、不二くんとホテルから出てきたのは本当なの……
でも、そんなこと、とても言えるはずなくて……
こうしてまたひとつ、嘘が増えていく……
「璃音!」
生徒達に注目される中、英二くんと不二くんと話しているところに、美沙が慌てて駆け寄ってきてくれる。
「あんた、どういうこと!?、さっき登校したら大騒ぎになってて……英二がすごい勢いで否定して飛び出してったっていうし……」
「すみません、ご心配をおかけしてしまって……その、本当にただの人違いで……」
「そうだぞ!、小宮山は昨日、親戚の人が来てて忙しかったんだかんな?」
私の顔を覗き込む英二くんに、あ、はい、そう返事はするけれど、どうしてもその目を見ることが出来なくて……
こんなぎこちない態度じゃ、ダメだって分かってるのに、罪悪感からどうしても普通に出来なくて……
「あ、小宮山、今日はさ、一緒にお昼食べよ?」
「え……あ、はい、いいですけど……ふたりでですか?」
思わず口をついた余計な一言。
あ、いえ、ふたりが嫌と言うわけじゃなく……、慌てて否定すればするほど、尚更、怪しくなっていって……
小宮山、意識し過ぎー!、そう言ってピンっと飛んできたデコピン。
すみません、そう言いながら額をさすると、そんな私たちに美沙がケラケラと笑いだす。
「あー、良かった、一時はどうなるかと思ったけど、いつものふたりで!」
「市川まで大袈裟なんだって!、小宮山、教室行こっ!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!、私も同じクラスでしょ!」
私の手を取り走り出す英二くんと、慌てて追いかけてくる美沙……
そんな私たちを眺めながら、いつものふたり……?、そう不二くんが眉をひそめて眺めていた。