第17章 【ユウワク】
いつものように屋上の入り口の上で空を仰ぐ。
青い空を見て思い描くのはいつも泣かせてばかりの顔。
先ほど昇降口で見かけた小宮山の横顔を思い出し、ふーっとため息をついた。
何なんだよ、学校であんな顔すんなって、誰かに勘ぐられたらどーすんだよ、オレは面倒はごめんなの、そう起き上がって頭の中でまくしたてても心はどこか沈んでいく。
だいたいオレだってさっきの態度はダメダメじゃん……そう俯いてため息を落とす。
つーか、何でオレがこんなの気にしないといけないんだよ、あーっ、もう!そう思って前髪をワシャワシャと掻き乱した。
ガチャリとノブが回される音がして、キギーッと重いドアが開く衝撃を感じ身を潜める。
うん、ここなら誰もいないね、そう言って人が入ってくる。
……この声、不二じゃん?そっと覗くと案の定、不二の淡い色の髪が見えた。
不二が数歩、歩みを進め振り返ると、もう一人誰かが入ってくる気配がしてドアが閉まる。
朝から告白かよ?なんて思いながら後頭部で腕を組んで仰向けになった。
これじゃ、オレ、あん時の小宮山と同じじゃん?そうこの間、オレが告白された時のことを思い出す。
早くおわんないかな、そう思って空を仰ぐと、聞こえてきた声に思わずピクッと身体が反応する。
「……話ってなんですか?」
この声、小宮山……!?
急いで身を潜めながらもう一度見下ろすと、確かにそこにいたのはオレの心をかき乱している小宮山本人だった。
つーか、なんで不二と小宮山が……?
それに、呼び出したの不二のほうかよ……?
そう思うとあの放課後のやりとりを思い出し、妙な胸騒ぎを覚える。
それは小宮山も同じのようで、顔は見えないけれど、全身から警戒心を醸し出していた。
不二のやつ、マジ……?
もしかして今からヤるつもりかよ……?
オレ、ここにいるんだけどー!?
って、そーじゃなくて……
小宮山……絶対、受け入れるよな……
そんで、また泣いちゃうじゃん……
そっと痛む心臓を握った拳で押さえつけた。