第100章 【コウショウ】
「立場、逆転だね……?」
クスクス笑ってわざとカメラをチラつかせる。
小宮山さんが女子高生と分かっていて、こんなところに入ったんだ。
しかも嫌がる彼女の腕を無理やり掴んでいるところが、バッチリと写っている……
これにどんな意味があるか、分からないほど馬鹿じゃないだろう。
「おい!ガキ!そのカメラをよこせ!」
「それは出来ない相談だな……彼女を解放してくれるなら写真は処分するけど?」
チッと舌打ちをして、悔しそうな顔をするその男に、小宮山さんがもう一度、すみません、そう泣きながら謝罪する。
それから、不二くん、私が悪いんです、そんな言い方しないでください、そう僕の顔を真っ直ぐに見て訴えて……
その目は涙で濡れていたけれど、やっぱり強い意思を失っていなくて……
「本当に申し訳ありません、食事代や、その……かかった費用は私がすべて持ちますから……だから……」
あ、でも、足らないかも……、そう小宮山さんは財布を覗き込んで、今はこれしか……そうありったけのお札を差し出す。
ひったくるようにそれを奪ったその男は、すごい形相で僕らを睨みつけると、そのままエレベーターの閉めるボタンを連打した。
「テメェ、必ず処分しとけよ!」
「もう彼女に近づかないって約束するならね?」
誰が近づくかよ!、そんな捨て台詞を残して降りていったエレベーター……
途端に静まり返るホール……
とりあえず、部屋、行こうか?、そうその男が投げ捨てた鍵を拾うと、小宮山さんはハッとして、それから慌てて乱されたコートを手繰り寄せた。
「あ、あの、ありがとうございました、来てくれて……でも、その、私……」
「安心して?、何もしないから……それとも、僕が信用出来ない?」
僕の相変わらずのずるい言い方に、小宮山さんは、そんなこと!、そう慌てて首を横に振る。
それから少し考えて、はい、それでは……、そう言って顔を上げた。