第100章 【コウショウ】
「おい!、お前、今、何を!!」
小宮山さんが嫌がってるのを確認して、連射したカメラのシャッター。
不二くん!、泣きながら僕の伸ばした手をとる小宮山さん……
驚いて呆然としていた男が、我に返り僕に詰め寄ってくる。
「あ、テメェはさっきの!、やっぱりお前ら知り合いだったんだな!」
「……まあね、彼女とは同級生なんだ」
「フン!、じゃあ、テメェも高校生か!」
小宮山さんを背中に隠しながら、その一言が聞きたかったんだ、そう言って口角をあげる。
ああ?、ガキが大人に逆らってんじゃねーよ!、そう声を荒らげる男に、いいの?そんなこと言って、そう低い声で答える。
「これ、フィルム式のカメラだよ?」
「それが何だって言うんだ!、早くその女を返しやがれ!」
返せ?、何を偉そうに……
小宮山さんはお前なんかのものじゃないよ?
……僕のものでもないけれど……
小宮山さんは、大切な仲間、英二のかけがえのない彼女なんだ……
ビクッと背中で大きく身体を震わせた小宮山さんが、ごめんなさい、そう震える声でその男に謝罪する。
大丈夫……僕に全部任せて?、そっと耳もとで囁くと、小宮山さんはまた大きな涙を流して、僕にも申し訳なさそうに謝った。
「もう一度言うよ?、これ、フィルム式のカメラなんだ」
「だからそれがなんだって言うんだよ!」
「……分からない?、デジタルカメラよりずっと証拠能力が高いんだよ?」
___株式会社の___さん?、僕のその言葉に、男の動きが止まる。
なんで知って……そう言いかけたその顔が、どんどんと青ざめていく。
「ああ、気がついた?、僕ね、記憶力には自信があるんだ」
さっきのフランス料理店で拾った社員証。
日本で知らない人はいないだろう、それほどの大企業の役職つき。
きっと守らなきゃならない、地位も名誉も、沢山あるんだろうね____?