第100章 【コウショウ】
家族に断りを入れると、急いで小宮山さんの後を追った。
相変わらずピッタリと身体を密着させて歩くその様子に、嫉妬と憎悪で狂いそうになる。
僕は相手が英二だから小宮山さんを諦めてきたのに……
そんな鼻の下のばした、どこの誰かも分からないやつが彼女に触れるなんて……
ギリリと唇を噛み締め、グイッと握りしめる拳に力が入った。
2人が向かった裏通り……
ここは……やっぱり……
案の定、2人が入って行ったのは、派手なネオンで飾り付けられた建物……
小宮山さん、本当にいったい何があったっていうんだ……
躊躇うことなく、2人に続いてその入口をくぐりぬけた。
すぐに小宮山さんの手を引いて、その男から引き離したい衝動をぐっと堪えた。
何があっても、小宮山さんを止めなくてはならない……
だけど今のままでは、彼女の決意を崩すことは出来ない……
どうしたら……
身を隠して確認したタッチパネルの部屋番号。
迷っている場合じゃない、部屋に入ってしまえばもう手が出せなくなってしまう……
2人が乗ったエレベーターが動き出したのを確認して、急いで非常階段を駆け上った。
頼む、間に合ってくれ……!
走りにくい服装を恨めしく思いながら、たどり着いた部屋番号の階数……
エレベーターは……良かった、まだ着いてない。
ハァ、ハァ、きれる息を整えながら、滲んだ汗を拳で拭う。
それから気がついたジャケットのポケットの中……
これは……、急いで愛用のカメラを取り出した。
フランス料理店で撮影は出来ないけれど、せっかく家族で出かけるんだ……
もしかしたら撮る機会があるかもしれない、そう思ってカメラを持ってきていたことに、よし!そう小さくガッツポーズをする。
例え小宮山さんが英二のために、このまま部屋へ向かうと言っても、これで止めることが出来る……
ゆっくりとエレベーターのドアが開く前で、しっかりとそのカメラのレンズを覗き込んだ。