第99章 【マコト】
すっかり派手にライトアップされた入口を、名前も知らない男の人と寄り添って入る。
心の奥底では嫌で嫌で仕方が無いのに、もう閉じた心ではその感情すら感じなくて……
「どの部屋がいい?」
「どこでも……出来れば落ち着いた感じの部屋がいいです」
「じゃあ、ここにしようか」
パネルのライトが消えて落ちてきた鍵を手にエレベーターへと向かう。
多分、ここに入ったら、きっとその瞬間から、私はもう……
大丈夫……私ならできる……
大丈夫……英二くんを守るためだから……
案の定、エレベーターが閉まった瞬間、奥の壁に押し付けられて、強引に唇を重ねられる。
無理やり口をこじ開けられて、男の舌が侵入してくる。
英二くんのときだってそうだったから、予想も覚悟もしていたつもりなのに、やっぱり気持ち悪くて身体が強張ってしまう。
滲む涙……でも、ダメ!、我慢しなくちゃ、必死に心を押し殺し、その男の首に腕を回す。
あっという間にコートのボタンが外され、大きく開いた胸元に男の人が顔を埋める。
脚のあいだに押し付けられる男の太ももに、お腹に当たる硬い感触……
イヤ……キモチワルイ……大丈夫……ちゃんと出来る……
「ハァハァ……柔らかくて、イイニオイ……やっぱり女子高生は最高だ……」
鼻息を荒くして胸の谷間に舌を這わせるその男の人を、嫌悪感しかない心で受け入れる。
チクリと感じた痛み……
ハッとして慌ててその身体を押し戻す。
「ダメ!!、痕、つけないでっ!」
必死に抵抗したけれど、グイッと腰を引き寄せられて……
その男に、チリチリと繰り返し痛みを与え続けられて……
ヤダ!、英二くんだけなのに!
私にしるしをつけるのは、英二くんだけなのに!!
「お願い、本当にやめて!!」
イヤ!、やめて!!、一度口をついたその言葉は、閉ざしていた心の壁をあっさりと崩壊させて、覚悟も信念も全て忘れさせて……