第99章 【マコト】
私の声に気がついてた男の人と、不二くんがこちらを振り返る。
当然だけど、不二くんは私だと認識した途端、すごく驚いた顔で目を見開いて……
ふ、不二くんがどうしてこんなところに……?
どうしよう!、まさか知り合いに、ましてや不二くんに見られるなんて!
驚いた顔で私を見ている不二くんと目が合ったまま、ピクリとも動けなくて……
この状況を誤魔化さなきゃいけないのに、どうしたらいいか分からなくて、だいたい誤魔化せるはずなんかなくて、たらりと額から汗が流れ落ちる。
「どうして……」
「マコトちゃん!、待ってたよ、さ、行こうか」
我に返った不二くんが私に声をかけかけた瞬間、男の人が私の元に歩み寄る。
あ、はい、おじさま、そう慌てて笑顔を作ると、腕を絡めてレジへと向かう。
「もしかしてさっきの男の子、知り合い?」
「いいえ、まさか……おじさまこそ、なにかお話してませんでしたか?」
「いや、落し物を拾ってもらっただけだよ」
チラリと視線だけ振り返ると、不二くんはまだ驚いた顔で私を見ていて、そんな不二くんに、ごめんなさい、そう心の中で謝罪する。
でも良かった、不二くんと話をせずに済んで……
今、話をしてしまったら、きっと全て台無しになってしまうから……
私の決心も、英二くんを守る目的も、なにもかも……
ごちそうさまです、そう会計を済ませた男の人に、笑顔でお礼を言って店を出る。
すごく美味しかったです、そう心にもないことを言ってまた笑う。
「……じゃ、そろそろ、行こうか?」
少し声のトーンが低くなり、肩へと腕を回される。
抱え込まれるような体制に、ゆっくりと身体を預ける。
大丈夫……私ならできる……
ほんのちょっと、我慢すればいい話……
「今度は、私が、たっぷりお礼をさせていただきますね……?」
出来るだけ妖艶に見えるように上目遣いで見上げると、その男はますますいやらしい顔をみせた。