第99章 【マコト】
「いやぁ!、離して!、やめてぇ!」
「うるせぇ!、今更、何言ってんだよ!、大人しくしろよ!」
抵抗してもがく私に、男の人もさっきまでの温厚な態度を一変させて、声を荒らげる。
分かってる……
ちゃんと受け入れないといけないこと……
だけどやっぱり、英二くん以外の人に身を預けるなんて出来なくて……
「ごめんなさい……でも、お願い、私、やっぱり……」
「ふざけんな、さんざん高い飯食いやがって!、あの女にももう金は渡してんだからな!」
「お金はちゃんと払いますから……本当にすみません……」
「そういう問題じゃないんだよ!、部屋についたらさんざん奉仕させてやる!」
英二くん……助けて……
私……嫌だよ……
英二くん……
英二くん……
ちーんとエレベーターがついた音がして、私の身体に舌を這わせていたその男の動きが止まる。
ドアが空いた瞬間、ほら、来いよ!、そうグイッと腕を引かれて無理やり歩かされる。
やっぱり、もう、この人に従うしかない……
ゆっくりと開いたエレベーターのドアの先に視線を向けると、さらに涙がこぼれ落ちた。
パシャ!、パシャ!
その瞬間、突然、当たりが眩しい光に包まれて、それから、数回、機械音が鳴り響く。
一瞬、何が起こったのかわからなくて、それから、これってシャッター音?って気がついて……
「小宮山さん!」
眩しくて眩んだ視界が開けた瞬間、目に飛び込んできたのは私に手を差出す不二くんの姿……
「不二くん!!」
同じように驚いている男の人の手を振り払うと、不二くんの差し出された手を握りしめ、その勢いのままその胸に飛び込んだ。
怖くて、怖くて、仕方がなかったから……
不二くんが助けに来てくれて、すごく嬉しかったから……
「良かった、間に合って……」
私の肩に添えられた不二くんの手は、相変わらず私を安心させてくれて……
来てくれてありがとう、そうお礼を言うとその肩に頬を埋めた。