第99章 【マコト】
「どーしても、ダメ……?」
「……はい、本当に申し訳ありません……」
ちゃんと納得してくれてたはずなのに、こうやって寄り添っていると、英二くんはそう何度も確認をしてきて……
その度に断らなきゃいけないのが、苦しくて辛すぎて……
「……だってさ、オレ、誕生日なんだよん?」
「はい……ごめんなさい……」
英二くんにとって、誕生日は特別で……
幼い頃、いくら慣れているからって、誕生日にたった一人で過ごすのは辛かったって、だから、私と過ごせるのが凄く嬉しいって、言ってくれてたのに……
「小宮山、いっつも忙しいから、オレ、すんげー我慢してんだけどー?」
「……ごめんなさい……」
いくら私だって、英二くんが本当に言いたいことは分かってる。
男の子だもん……ましてや、英二くん、そういう我慢とは無縁に生きてきたんだし……
「すぐ帰るからさ……?」
「……ごめんなさい……」
私がオンナノコになったこともあるし、ここのところ、なかなかそういう機会がなくて……
きっと英二くん、本当はすごく不満に思っているはずで……
「むー、あんま、ほっとかれると、オレ、また『オトモダチ』に連絡しちゃうんだかんなっ!」
こんなに英二くんのことを我慢させているのに、他の男の人に抱かれないといけないなんて……
そう思うと、本当に申し訳なくて、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「わわっ、うそうそ!、小宮山、今のジョーダンだから!、オレ、もう小宮山以外、指一本触れないからっ!」
泣かないって決めたのに……
泣いたら、きっと、決心が鈍ってしまうから……
だから、お願い、もう抱きしめたりしないで……?
「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……」
「小宮山、悪くないよん!、ゴメン!、酷いこと言って、ほんとにゴメン!」
私の涙の理由を勘違いした英二くんが、必死に謝ってくれる。
その腕の中で、私もひたすら謝り続けるしかなかった……