第98章 【プレゼント】
「……私に身体を売れ、と言うのですか?」
「あぁ、やっぱりちゃんと理解してくれたわね、なら話は早いわ」
そう言って嬉しそうに英二くんの本当のお母さんは、二本目のタバコに火をつける。
「私ね、思いついちゃったのよ、英ちゃんを働かせるより、英ちゃんに忠実な雌猫を働かせた方が、たくさん稼いでくれるって」
この人は……何も変わっていない……
英二くんを、どこまでも、支配し続けるつもりなんだ……
英二くんだけじゃなく、その大切なものまでをも……
すごくショックなことを言われているのに、なぜか冷静に受け止められている自分がいて……
きっとそれは、こうなるってことを、どこかで覚悟していたからだろうけど……
良かった、鳴海さんを巻き込まなくて、そう先に彼女を家に返したことに心から安堵する。
「大丈夫、簡単だから。英ちゃんにしてあげるようにすればいいのよ。あ、もちろんタダ働きなんかさせないわ。ちゃんとあなたにもマージンあげるから」
気持ちよくなってお金まで貰えるなんて最高でしょ?、そう言いながらこちらに向けられた笑顔を睨みつける。
いやらしい笑い……キモチワルイ……
お金の為に……そういう行為じゃないのに……
大切な人と愛を確かめ、深め合う行為なのに……
「……私がそんな提案、受け入れると思いますか?」
ゆっくりと、低い声で返事をする。
きっと、これはお願いという名の命令……
英二くんのセフレだった時と同じ……
だけど、こんな命令、簡単に引き受けたくない……
「そうね、小宮山さんに断られたら……やっぱり、英ちゃんに働いてもらおうかしら……?」
英ちゃんなら、きっと、沢山の女性客がつくはずよ?、そう言って勝ち誇ったように口角をあげるその笑顔を、思いっきり睨みつけた。
でも私のその反応すら、英二くんの本当のお母さんにとっては、術中の範囲内だったようで……
「ほーんと、英ちゃんはやっぱり良い子ね。こーんなに忠実な雌猫ちゃんを私に用意してくれたんだから」
さすが、私の子どもだわ、そう高笑いをするその歪んだ顔を見ながら、ゆっくりと心を殺していった。