第98章 【プレゼント】
嫌で嫌で仕方がなかったカラオケ店だけど、考えてみたら誰にも見られる心配がないから、やっぱり良かったのかもしれない。
今日は英二くんがバイトの日で良かった……
万が一、学校でこの人と鉢合わせしていたら、英二くんが大変なことになってしまっていたもの……
鳴海さんとは校門のところで別れた。
この人、私にも話があるって、そう言って帰るのを渋った鳴海さんだったけど、これは私と英二くんの問題ですから、なんて鳴海さんの顔を真っ直ぐに見て言うと、じゃ、分かったわ、そうあっさりと引いてくれた。
鳴海さんには酷な言い方だったかな、そう思って胸がいたんだけれど、それでも彼女を巻き込むわけにはいかなくて……
それに、英二くんの本当のお母さんことも、色々、知られる訳には行かないし……
「ありがとうございます……それで、あの、この事は英二くんには……ううん、誰にも言わないでください。出来れば、忘れてもらいたいです」
「……無理言いますね、まぁ、いいですよ、黙っとくくらい。忘れられるかは分かりませんけど」
よろしくお願いします、そう深々と頭を下げて鳴海さんを見送った。
酷い言い方をしたのに、私の気持ちをわかってくれたことに感謝した。
そう、鳴海さんに言った通り、これは私と英二くんの問題……
それから、この人と……
そう目の前で、断りもなくタバコに火をつけた、英二くんの本当のお母さんの顔をじっと見つめる。
それにしても、この人……若い……
それは最初から感じていたこと。
派手な見た目や格好だけの問題じゃなく、私のお母さんや英二くんの育てのお母さんとはちょっと違う……
改めてこうして向かい合ってみると、尚更、実際に高校生の子供がいる歳には見えなくて……