第98章 【プレゼント】
「あなたたち……暇なことしてないで、さっさと家に帰ったら?」
突然現れた鳴海さんは、私の横を素通りして友人たちのもとに近寄ると、呆れた口調で話しかける。
その様子に、周りの友人たちは、戸惑いながら顔を見合わせる。
「だ、だって、芽衣子……私たち、やっぱり納得いかなくて……」
「そうだよ!、芽衣子、すっかり変わっちゃったんだもん!」
すっかり変わった、そう言う友人の言葉通り、以前は決して絶やさなかった笑顔は全く見せず、愛らしかった声も少し低いトーンで……
それが私と英二くんが振りまわした結果ならば、やっぱり申し訳ない気持ちになってしまう……
「私たち、芽衣子のためを思って……」
「誰も頼んでないでしょ?、なに勝手に『私のため』なんて大義名分掲げてんの?」
「そ、そんな言い方することないでしょ!、芽衣子が喜ぶと思ったのに!」
だから頼んでなんかないわよ、そう吐き捨てるように言った鳴海さんの言葉に、友人たちの顔つきが変わる。
何よ、感じ悪い、そう口々に文句を言い始め、もうあんたなんか知らないわよ!、なんてキツい言葉をはいて去っていく。
「あ、あの、鳴海さん、いいんですか……?、怒らせちゃって……」
「別に……あの人達、私に近づいてくる男子目当てなんですから」
私がこんなになって、男子たちが近づいてこなくなったのが困るんでしょ、そうため息混じりに吐き捨てたその言葉に、なんとなく、鳴海さんの気持ちも分かる部分があって……
今思うと、中学の頃、同じように感じることがないわけじゃなかった。
その自覚を認めてしまうと、自分の心の狭さや、自惚れの強さに心が押しつぶされてしまいそうで……
だから、気が付かないふりをしていたんだけど、その結果がアレで……
「鳴海さんは強いですね……」
「……強いのは小宮山先輩じゃないですか」
私……?
私はただ、傷つくのが怖くて逃げただけ……