第98章 【プレゼント】
「あの、小宮山先輩、ちょっと酷くないですか?」
「そうです、芽衣子から菊丸先輩奪っちゃうなんて!」
案の定、その子たちの言いたいことは私に対する不満で、芽衣子から菊丸先輩をってことは、鳴海さんのお友達かな?って思って、だったら尚更ちゃんと向き合わないと、そう身体の向きを変えてその子達の顔を真っ直ぐに見つめる。
英二くんとのことがオープンになってから、目立ってなにかされることは無かった。
それは英二くんや不二くん、テニス部のみんな、それに美沙やクラスメイトたちが庇ってくれたから。
周りに助けられて、細々としたことはあったけど、大きな問題は何もなくて……
だから、それでもこうやって声をかけてくるなんて、きっとそれほど、鳴海さんを大切に思っているからで……
「芽衣子、本当に菊丸先輩のこと、大好きだったのに!」
「そうですよ!最初に芽衣子が付き合ってたんだから、諦めてください!」
「それで芽衣子にちゃんと謝って!、じゃないと私たち、気が済まない!」
詰め寄ってくる女生徒たち……
そんな彼女たちに、ちゃんと向き合わないと、そう思うんだけど、でもなにも言えなくて……
自分の気持ちを声に出すことが苦手だからってだけじゃなくて、彼女たちの鳴海さんへの思いがわかるだけに、何を言っても言い訳にしかならないって分かってるから……
「なんとか言ってくださいよ!、バカにしてんの!?」
何も言わない私に、その中の一人が怒りをあらわにする。
ドンッ!と突き飛ばされた肩、思わずよろめいて数歩、後ずさりする。
「……なにやってんの?、あなた達……」
後から聞こえたその声に振り返る。
この声って……やっぱり……
そこに立っていたのは、思った通り鳴海さんで、彼女は私と目が合っと、少し眉間にシワを寄せる。
それから、彼女の友人達に視線を移し、すべてを理解したようにため息をついた。