第97章 【ラブアンドピース】
「……で、本当はなんですか?、言いたいことがあるんですよね?」
あー、やっぱ、小宮山に作った笑顔は通じないか……
あっさり見破られた作り笑いに、今度はほんとの苦笑いが飛び出す。
あ、今のは本物、そう言って笑う小宮山に首をすくめるんだけど、やっばり分かって貰えることが嬉しくて……
「……ん、あのさ……誕生日のことなんだけど……」
苦笑いで切り出したかーちゃんの申し出。
目をパチパチとさせた小宮山は、いいんですか?、そう嬉しそうに頬を緩める。
「そりゃ、いいけどさ……でもでも!、オレ、小宮山と二人きりで過ごしたぁ〜い!」
そんなオレの本音の訴えに、小宮山は困った顔をするんだけど、結局、やっぱりご家族の好意に甘えましょう?、なんて首を振る。
やっぱり、ね……
「小宮山はそういうと思った!」
「英二くん……」
これ以上ガキみたいな態度をとっても、小宮山を困らせるだけなのは分かるけど、ついつい声が不満げになってしまう。
案の定、小宮山はすげー眉を下げてオレを見ていて……
「あ、あの……、でも、それまでは二人で過ごしましょう?、時間は短くなってしまいますけど、その、英二くんの好きなところに行きますから……ね?」
ほんとに?、そうチラッと小宮山の顔を上目遣いで見上げると、はい!本当です、なんて小宮山が答える。
ほんとにホント?、はい、本当に、そんなやり取りを何度が繰り返すと、そんじゃ……、なんて渋々と話を切り出す。
「……オレ、小宮山んちがいい……」
結局、オレが限られた時間でなにか選ぶとしたら、やっぱ、こんな展開で……
誕生日まで二週間……小宮山のオンナノコも余裕で終わってんじゃん……?
えっと?、そう首を傾げる小宮山に、もう一度、小宮山んちがいい、と繰り返す。
無理させないからさ……ダメ?、そう問いかけるオレに、あ!って言葉の真意を察した小宮山は、一気に顔を赤くして、ダメじゃないです、そう小さい声で俯いた。