第97章 【ラブアンドピース】
「……なんだかんだ言って、やっぱ、市川って良い奴だよな」
「はい、大好きです、本当に……」
散々、文句を言っていた市川だったけど、何しに来たんだよ!って頬をふくらませたら、ほら、あんた達お弁当、そう小宮山とオレの通学カバンを差し出した。
小宮山のだけじゃなく、オレのまで持ってきてくれたところが、ガサツなくせに気配りができる市川らしくて……
先生に許可をもらって、保健室内で弁当を食べさせてもらう。
小宮山と二人っきりで弁当なんて、体育館裏で食べてたあのころ以来だから、なんか、懐かしい感覚になってしまう。
相変わらず小宮山の弁当は、色とりどりで美味しそうで……
小宮山のかーちゃんの愛情がたっぷりと感じられて……
そういや、小宮山に誕生日のこと言わないとな……
じっと小宮山の弁当を見つめながら、なんて切り出そうか真剣に考える。
「____あのさ……」
「英二くん、食べます?、玉子焼き……今日も甘めですよ?」
よし!っと意を決して切り出した言葉は、目をぱちくりさせる小宮山に打ち消されて……
違うんですか?、そう首を傾げてこっちを見るから、あー、うん、美味しそーだにゃーって……、なんて笑ってごまかす。
「あ、ほんと、甘め、んまーい!」
「ふふ、当然ですよ?、私のお母さんが作ったんですもん」
嬉しそうに笑う小宮山……
はぁ……ほーんと、オレ、ねーちゃんの言う通り、すげー、ヘタレ……
言わなきゃいけないのに、なかなか言い出せなくて、また今度でいいかな?って思うんだけど、イヤイヤ、もう言わなきゃって思って……
だって、オレの家の夕飯に招待するってことは、小宮山のかーちゃんにちゃんと許してもらわないといけなくて……
小宮山からだけじゃなく、彼氏のオレから、しっかりお願いしないといけなくて……