第97章 【ラブアンドピース】
平日だしどっか行く時間があるわけじゃないけど、学校帰りにペットショップ巡りしたり、小宮山の好きな雑貨屋に行ったりして、制服デートしてもいいなって思ってたし、小宮山がいいって言ってくれれば、小宮山ん家に行って、まぁ、その、つまり、ヤリたいなー……なんて、やっぱ思うわけで……
まぁ、こんなふうに思うんだったら、最初から、家族にお祝いしてもらおうかな、とか言わなかったら良かったんだけど……
「おい、英二!ぼーっとしてんな、試合中だぞ!」
突然のクラスメイトの声に、ハッとして我に返る。
そういや、今は4時間目の体育の授業で、ちょうどサッカーの試合中で……
気がつくと、目の前にはパスされたボールが飛んできていて……
得意の体育の時間まで、ぼーっとしてる場合じゃないよな……
集まってくる男子生徒たちの間から、よっと頭一つ、二つ、三つ……高く飛び出すと、胸でボールを受けて相手ゴールまでドリブルで突破する。
「いっけー!、菊丸シュート!」
そのままの勢いでシュートを決めると、駆け寄ってくるチームメイトと笑顔でハイタッチをした。
「ああー、結局、英二のハットトリックかー……体育はなにやっても英二の独断場だよなー」
「へへーん、ブイ!」
体育の授業が終わって、いつものように男子更衣室で着替えを済ます。
もう英二、サッカー部入れよ、なんて小林たちに言われて、今更〜?、なんて笑いながら、少しだけ胸が苦しくなる。
何をやってもスポーツは人並み以上にこなせるけれど、テニスを諦めないといけなくなっても、他のスポーツをする気にはならなくて……
やっぱり、あんなに熱くなれるのは、テニスしかなくて……
「でも、せーっかくの大活躍、小宮山に見せれなくて残念だったなー?」
「だよなー、女子、体育館でバレーだっけ?……そりゃ、残念、随分、いい眺めだろうな、小宮山の揺れるおっ……」
「おい、お前ら!!、それ以上言ったら、オレ、怒るかんな!!」