第96章 【カンシャ】
テニス部のみんなとそれぞれの教室の前でわかれると、英二くんと美沙と3人で自分の教室に入る。
途端にピタッととまる話し声。
それから、私の席の周りで慌てるクラスメイトたち。
それは、以前、私に嫌がらせをしたことがある不二くんのファンの子たち……
何してるの?、その様子に美沙が眉間にシワを寄せて問い詰める。
「な、なんでもないよ!、本当!」
「っていうか、来るの早いって!」
「違う!あんたが遅かったんでしょ!小宮山さんが登校する前にって言ったのに!」
サッとそのうちの一人が背中に何かを隠す。
その瞬間、お前ら!、そう怖い顔をした英二くんがその手を掴みあげた。
「痛いっ!、ちょっ、だから違うったら!」
「何が違うっていうんだよっ!」
掴み挙げられたその子の手には、白い菊の花……
あー……、中学の時も、しょっちゅう飾られたなー……なんて苦笑いしてしまう。
また嫌がらせされても仕方がないよね……
逆に、私の方が騙してたこと謝らないと……
「あ、あの、英二くんも美沙も、そんな怖い顔しなくても……英二くん、手を離してください、暴力はダメです」
私のその声に、納得いかなそうな顔をしていた英二くんだけど、しぶしぶ掴みあげてた手を離す。
本当に違うんだってば……、そう手首をさすりながら、その子は頬を膨らませた。
「……あの、英二、本当に違うんだよ、この子たち、もともと璃音の机にあったそれを片付けようとしてたところなの」
恐る恐る近づいてきたクラスメイト。
うんうん、そう他の子も首を縦に振って同意する。
……片付けようと……してくれてたの……?
私が……来る前に……?
3人で顔を見合わせると、だから違うって言ってるでしょ、そう不満げな顔をするその子達。
ごめんなさい!、そう慌てて謝ると、いや、なんも謝ってもらわなくてもいいけど……、そう視線をそらされる。