第16章 【ヘンカトフアン】
みゃあ?
気がつくとネコ丸がそんなうずくまる私の身体にすり寄っていた。
だめ、こんなところで泣いていては……
もうすぐお母さんが帰ってくる……
ゴロゴロとのどを鳴らすネコ丸に、教えてくれてありがとう、そう頭を撫でてお礼を言うと、何とか震える身体を起こして立ち上がる。
フラフラする頭を抑えながら、『今日はもう寝ます、ごめんなさい。』そう母宛にメモを残し、自室の扉を閉めてベッドに潜り込む。
何とか潜り込んだベッドには先ほどまでの英二くんの香りも温もりも、何事もなかったかのようにたっぷりと残っていて、それがまた私の胸をどうしようもなく締め付けた。
『___オレさ、もう……』
先程、そう言った英二くんの顔を思い出す。
あの顔で、あの声で、その後に続く言葉なんて、私には一つしか思いつかなくて……
オレさ、もう、小宮山いんないや……そう彼が言うのを想像して胸が張り裂けそうに痛んだ。
どうして……?
さっきまであんなに優しく、そして激しく求めてくれたじゃない……?
彼がどうして急に態度を変えたのか、必死に記憶の糸をたぐり寄せる。
……夢?
そうだ、その辺からおかしくなったんだ……
泣いてんのは、小宮山じゃん……?そう俯いていった彼の顔を思い出す。
私が泣いているから……?
そんな私がウザくなっちゃったの……?
英二くんの前では必死に我慢していたのに、やっぱりばれてしまったの……?
イヤ!!
身体だけなのに……
私が必要とされているのは身体だけなのに……
英二くんからその身体まで必要とされなくなるなんて……
そんなの絶対イヤ!!
帰宅したお母さんが心配して部屋のドアをノックしたけれど、とてもそれに対応できる状態ではなくて、寝た振りをしてその場をやり過ごした。