第96章 【カンシャ】
「璃音、あんたその荷物なに?」
「あ、えっと、念のために……」
いつも通学カバンには色々入れて持ってきている私だけど、今日は何があるかわからないから、予備の上靴だとか、体操着だとか、本当に色々持ってきていて、そんな私にのカバンを見ながら美沙が呆れて笑う。
「まぁ、璃音らしいけどさ……」
「……それって、バカにしてます?」
「褒めてはない」
酷い、そう頬をふくらませてクスクス笑う。
さっきまで、すごく心細かったのに、もう周りの視線なんて気にならなくて……
「おはよう、小宮山さん」
突然、聞こえた声に顔を上げると、そこには不二くん、乾くん、河村くんが立っていて、もしかしてみんなも早く来てくれたのかな?、なんて思うのは、きっと自惚れじゃないはずで……
「ちょっと、3人だけー?、肝心の英二はどこいったのよ?」
「さぁ……てっきり小宮山さんと一緒に来るのかと思ったけど……」
「なんなのよ、あいつ、本当、薄情よね!、知ってたけど!」
「クスッ、英二だからね」
3人に合流すると、何故か話の流れは英二くんの悪口になっちゃって、あの、違うんです、私が断ったから、そう慌てて否定したけれど、聞こえてるはずなのに、ふたりとも聞こえないふりをしていて……
「だいたい、璃音は英二に甘すぎるのよね、私だったら、もうとっくに愛想つかしてるわ……」
「同感だね、だいたい、もっとずっといい男がすぐ近くにいると思うんだけど」
「あら、意外、不二くんって自虐ネタも言うんだ?」
「クスッ、何のことかな?」
ま、どっちにしても、英二に璃音はもったいないのよねー、なんて美沙も不二くんも笑顔で話してるんだけど、何故かふたりの周りに黒いオーラが漂ってる気がして……
あ、あの、美沙?、不二くん?、そうオロオロしながら、この2人、なんか意気投合してる?、なんて思って苦笑いしてしまった。