第95章 【ソラニウカブ】
またのんびりと上っていく観覧車……
もう閉園時間で乗ってくる人がいないそれは、本当にオレと小宮山のふたりきりの空間で……
だけど、小宮山はそんな状況を楽しもうとはしないで、すぐにオレの腕の中から抜け出したと思ったら、そのまま反対側の窓を眺める。
「……小宮山、怒ってる……?」
「……怒ってはいませんけど……人様に迷惑をかけるのは、感心しません」
折角のふたりきりの空間なのに、小宮山はあからさまに不満そうな顔をしていて……
そりゃ、真面目で曲がったことが大嫌いな小宮山だから、当然といえば当然なんだけど……
「悪かったって、もうしないからさ、機嫌、なおしてよ……?」
「……別に機嫌が悪いわけじゃないですから」
普段、オレがいくら小宮山を振り回しても、仕方がないですねって、すぐに笑って許してくれるのに、今回はやっぱり他の人に迷惑をかけたってのが、相当面白くないらしく……
「小宮山……?」
「……」
「ねぇ、小宮山ってば……?」
「……」
「小宮山……好きだよ?」
ずっと無言だった小宮山が、そのオレの言葉にピクっと反応する。
お?、そう思って、小宮山の顔を覗き込むと、小宮山はもっとそっぽを向いて……
「小宮山、大好きだから許して?」
「……」
「小宮山、すげー、好きだから、捨てないで?」
「……」
「オレ、小宮山がいないと生きていけ……」
「あー、もう、英二くん、分かりましたから、やめてください!」
どんどん、真っ赤になって俯いてしまった小宮山が、大きい声でオレを制する。
やっとこっち向いてくれた、そう言ってニッと笑うと、小宮山は眉を下げて困った顔をしていて……