第95章 【ソラニウカブ】
「……あ、あの、もうこの位置ですと、となりのワゴンから見えちゃいますので……」
「別にいーじゃん?、小宮山が気にするほど、よそなんて見てないって?」
もう一度小宮山の肩に腕を回すと、辺りを気にして拒んでくる小宮山を説得?して、今度こそしっかりと唇を重ねる。
柔らかくて、いつもより少し冷たくて、そしてリップの甘い味がする……
ふわりと短く何度も繰り返して、それからチュッとリップ音を響かせた。
「……もう、英二くんったら……」
頬を染めて嬉しそうにしているくせに、恨めしそうな上目遣いでオレを見る小宮山……
あー、軽いキスだけで終わらせるつもりだったけど……
そんな顔されたら、もっとずっとくっついていたくなるっての!
「あっ、英二くん!、もう着いちゃ……!」
「恥ずかしかったら、目、つぶっててよん?」
ゆっくりと搭乗口に戻ってくるワゴン……
抵抗する小宮山の腰にグイッと腕を回して、逃げないように抱きしめと、小宮山の顔が見えないように、ドアを背にさせ自分の胸に閉じ込める。
「お疲れ様でし……え?っと、あ……」
「ごめーん、もう一周だけ!」
人差し指をたてて、小宮山の頭越しに係員さんにお願いすると、あの、英二くん、そんな、ご迷惑で……、そう胸の中の小宮山が思いっきり抵抗した。
「大丈夫だよにゃ?、あと一周だけだからさ?」
無理やり力づくで胸の中に小宮山を押し込めると、係員さんが呆れながらも微笑ましそうに笑ってくれて……
本当にあと一周だけだよ?、そう言って、開けたドアをまた閉じてくれる。
「英二くん!、そんなワガママ言っちゃダメですよ!、もう閉園時間なんですから!」
「いいって言ってくれたじゃん?、大丈夫だって!」
もう少しだけ、小宮山と二人きりでいたいから……
あの空の中に、溶け込んでいたいから……