第95章 【ソラニウカブ】
「はっ!、まさか、手作りじゃないよな!?」
「い、いえ、それは……その、手作りしたクッキーは、何故か爆発しちゃいまして……」
手作りじゃないと聞いて、良かった、そうホッとして……
それから、ん?、爆発?って首を傾げて……
まぁ、究極の不器用で料理音痴の小宮山なら、有り得ない話じゃないけど……
「まぁ、いいや、この冬は必ず小宮山の本命チョコ、オレにくんなきゃ、怒るかんね?」
「は、はい!、必ず……」
「絶対、手作りだかんな?、例え失敗したって、オレ、ぜんぶ食べるからさ?」
失敗するのが大前提なんですね……、そう苦笑いする小宮山に、あ、いや、その、なんて言葉を詰まらせる。
いいんですよ、事実ですし、そう小宮山がクスクス笑いながら、でも、頑張りますね……、なんて言って、グッと拳を握りしめた。
「あ、でも、まずは英二くんの誕生日ですよね?」
その小宮山の言葉に、一瞬、身体の動きが止まった。
オレのその様子に、あ、やっぱり、私じゃダメですか……?、そう小宮山が眉を下げる。
「ダメじゃない!、小宮山じゃなきゃ、ヤダってば!」
慌ててブンブンと首を横に振った。
もちろん、小宮山に祝ってもらいたいけど……
さっき、誕生日だけ敢えて外して言ったのは、一度、小宮山を裏切ってる負い目っていうか……
裏切っている間に、芽衣子ちゃんと誕生日の約束をしたの、小宮山に見られていたはずだから……
なんか、切り出しにくくて……
「……オレさ、ガキの頃……菊丸家に来る前……」
そのオレの言葉に、小宮山が顔を固まらせる。
……はい、少し間を開けて、そう返事をする。
「あの女にとってはさ、オレの誕生日なんて全くカンケーなくてさ……誕生日とかクリスマスとか……やっぱ、そんな日にひとりは特に辛くてさ……」
だから、菊丸家にきてからは、なおさら幸せで……
小宮山がいてくれたら、もっと、絶対、幸せで……